AUGUST by Collier Schorr [SIGNED]
アメリカ人フォトグラファー、コリエ・ショア(Collier Schorr)の作品集。1990年代の初めから折を見てはドイツ南部を訪れ、はるか昔の幻影が巣くう小さな町のドキュメンタリーと架空のポートレイトを編纂していった。作者は戦争写真家、旅回りの肖像画家、人類学者、家族史家など、いくつもの重なり合う役割を担い、記憶、民族意識、戦争、移住、家族によって決定される場所と時間が錯綜するストーリーを描き出した。
本作は、この時期にドイツの都市シュヴェービッシュ・グミュントで撮影したポラロイドを使って、切り取られた瞬間を超えて存在するはずではなかったイメージが写し出しているわずかな空間を探求している。また過去20年間を振り返り、このイメージを歴史の一部として見せる一方で、制作の手段について考察している。その中で作者は、現代に生きるドイツの人々を過去に溶け込ませようとする中で犯した失敗を明らかにし、アーティストと被写体、被写体とコスチュームの距離を暗喩的に表現している。
歴史的な重みをもつ妄念や誘惑を意識しつつ、作者は共感と批判の間に横たわる空間を探った。リナ・ウェルトミューラー(Lina Wertmüller)の映画「愛の嵐(英題:The Night Porter)」のポーズをまねてフェザーの襟巻を巻いたドイツ人の少年のイメージには、フェティシズムと制服の行為遂行的な歴史や、ドキュメンタリーと小説化、距離と欲望の間を行き来する歴史に対する作者の興味がよく表れている。
本作は「Forests and Fields(原題:Wald und Wiesen)」シリーズより「NEIGHBOURS / NACHBARN」「BLUMEN」に続く第3巻にあたる。本としてのフォーマットでの制作を本質的なテーマとして掲げるこのシリーズは、伝統的なカテゴリーの概念を使って異なる視点を作り出す本を継続的に出版している。1つ1つの本は、日記であると同時に、写真年鑑、パリンプセストやスクラップブックでもある。そこでは、本という資料を通じて新しいものの見方を提示するために、再編集を通じて作品を拡大・否定し続けるプロセスが使われている。どの本もサイズはほぼ同じだが、それ自体が独立したユニークな作品となるように作られている。
今後刊行予定のシリーズ最終巻は、写真を通じて探求された概念に着想を得て書き下ろされた文章や既刊からの再掲など、テキスト主体となる。また今後、「Forest and Fields」シリーズ特装完全版(ナンバリング、サインが入り函に収納)が刊行予定となる。