WHITE SHOES by Nona Faustine
アメリカ人フォトグラファー、ビジュアルアーティストであるノナ・ファスティン(Nona Faustine)の作品集。
かつての奴隷貿易に関わる中心的な場所であるが、今では大部分がぼやかされ認知されていないニューヨーク周辺を舞台に撮ったセルフポートレート作品で構成されている。奴隷の競売場、奴隷が眠る埋葬地、農場、奴隷船が停泊していた沿岸地域を訪れ、そこで作者自身が白いハイヒールのみ身に付けたヌードの状態でポーズを取り、撮影を行った。歴史がありありと目に見える場所で自身を記録することで、本作が名前も記憶も失われたままそこに眠る人々と結びつき、導く者・受け入れる者としての役割を果たす。
静寂でありながら反骨心に満ちたこの自己表現を通じ、作者は征服・骨相学・疑似科学で形成されてしまった黒人の描写史に応える。複雑さを纏う大判のイメージは、奴隷が写る銀板写真(ダゲレオタイプ)と学者によって依頼され撮影された写真をはじめとした資料を参照しながら制作されている。一方、ヌードの姿は、大胆な自己主張でありながら弱さを表現しつつ、西洋美術における黒人と女性のヌードが残した「遺産」を覆している。
本作品で一貫して表されているのは、タイトルでもありお守りのような存在である「白い靴」が、過去に、そして未だに白人を優勢だとする文化に有色人種が適応するよう多くのことを要求されていることを示唆している。歴史的かつ推論的でありながら、本作は見えているものと見えていないもの、見せていることと隠されていることの間にある関係性に立ち向かう。
詩人、パフォーマンス アーティスト、俳優であり、活動家、教育者でもあるパメラ・スニード(Pamela Sneed)、作家であり詩人、脚本家のジェシカ・ラネイ(Jessica Lanay)、美術評論家のセフ・ロドニー(Seph Rodney)によるテキストとラネイによる作者へのインタビューを収録。