アルジェリア生まれのフランス人アーティスト、アデル・アブデスメッド（Adel Abdessemed）の作品集。2022年7月から9月まで中国の「上海外灘美術館（ロックバンド・アート・ミュージアム / ROCKBUND ART MUSEUM）」で開催された展覧会「An Imperial Message」に伴い、同美術館の協力のもと制作された一冊。

作者が生み出す芸術は、イメージを形式的なデモンストレーションから解き放ち、現実へと真っ直ぐ進ませることと結びつかせており、そこに余すことなくかつ頑固に取り組んでいる。それはつまり、実質的なトラウマやファンタジーに向かうことであり、「現実」を表現したり、「想像」を転化させようという見せかけの姿勢とは全くかけ離れている。本書は、まるで逃げるように、飛ぶように、落下するように、消えるように、あるいは死ぬように、空っぽの紙の表面にぶら下がり、場所ではない場所へ、時間の外へと浮遊する身を木炭で描いたドローイングシリーズがまとめられている。この作品群は、線の一構成として、ドローイングにおける一般的な定義を再考する。それは、目に見えるもの（と、見えないもの）の密度や儚さをユニークに体験させてくれる、痕跡であり、影であり、傷であり、感覚であり、不透明さなのである。