THE LAST COSMOLOGY by Kikuji Kawada
「 ラスト・コスモロジー」は、1969年の最初の撮影に始まり昭和の終焉、そして世紀末のカタストロフィまでを捉えたシリーズ。 1995年に評論家の福島辰夫の監修のもと、写真展とそれに付随する形で写真集が出版されるまで、約30年の間、「ザ・ラスト・テン」「スカイ」などのタイトルで写真雑誌への掲載などを続けてきた。昭和という時代は、日本が戦争、そして天皇制の崩壊を体験した時代。幼少期に戦争を体験し、作品「地図」で戦争~戦後を追・実体験した川田にとって、昭和の終わりはひとつの大きな時代の終焉として深い感慨を持つものだった。ちょうど同じ頃に、20世紀日本で見られる最後の金環日蝕があり、天空のドラマチックなショーと、時代の終焉と言うふたつの「終わり」を体験した川田は「最後のイメージ」という言葉がメタファーとして強く写真の中に写り込んで来るのを感じたと言っている。一群の写真は、この「最後のイメージ」がきっかけとなりラスト・コスモロジーと名づけられた。その後も撮影は続き、世紀末へ向けて「『最終的な変化』に至るプロセスがより加速されて見えること」を見せた「ZENO – The Last Cosmology」をP.G.I.にて1996年に開催。1998年には「ロス・カプリチョス」「カーマニアック」シリーズとともに「カタストロフ三部作」として写真集「世界劇場」にも掲載されている。本書は今までの作品集を復刻させたものではなく、未発表のものも含めたセレクションから編集し、世紀末から15年を経た現在からかつての終焉を見つめた、また新しい解釈の作品集。「私ではなく貴方がイメージするコスモスの色」という川田の問いに対する、MACKディレクターのマイケル・マックからの返答として写真を反転させた表紙の白となった。写真に対して写真集を「最終的なオブジェ」と位置づけるマイケル・マックに写真家が共鳴し出版された本書は、MACKとして初の日本人作家タイトルとなる。