ADVICE FOR YOUNG ARTISTS by Alec Soth
国際的写真家集団「マグナム・フォト」正会員を務めるアメリカ人フォトグラファー、アレック・ソス(Alec Soth)の作品集。2022年から2024年にかけて作者はアメリカ全土をまわり、25もの大学の美術学部を訪れた。本書は、その過程で作者が制作した作品で構成されている。本書のタイトル「若きアーティストたちへのすすめ(ADVICE FOR YOUNG ARTISTS)」の意味は、おそらくこの訪問そのものとも同様に、誤解を招きかねないものであろう。作者が知恵や手引きを与えるというよりも、人生の様々な段階において制作することや、写真・時間・歳を重ねることとの関係に対して、尖ったまま解き明かされていない思考を提示している。本書に収録されている写真は、教室での授業を思わせる形式的な習作から、よりやんちゃで気ままな自己表現が見受けられる作品まで幅広く展開されている。曖昧な演出、見つけられた形式、感情豊かなポートレイトが、ポストイットに走り書きされた格言的な引用や仕上がりきっていない志とともに散りばめられている。生徒たちの写真の中には作者自身もそこかしこに現れており、あやしげな賢者として彼らの中に紛れ込んでいる。
アメリカ人フォトグラファーのウォーカー・エヴァンス(Walker Evans)による最晩年のポラロイド写真作品から着想を得たこの作品は、自身の最初の作品集『SLEEPING BY THE MISSISSIPPI』(2004年)の刊行から20年経た上での作者の実践における新たな広がりと新しい景色が見られる地点を感じ取ることができる。『BROKEN MANUAL』(2010年)での発想を思い起こさせる本作は、内省と挑発を隠すために、うわべだけの教育的な体裁を用いており、若きアーティストの経験を追った研究であるとともに、本書は歳を重ねたアーティストになっていく予感でもあるのだ。