ハンガリー人建築家、デザイナー、マルセル・ブロイヤー（Marcel Breuer）の作品集。1923年から1973年にかけて制作された住宅建築を紹介した1冊。バウハウスの創設者であるヴァルター・グロピウス（Walter Gropius）の教え子として名を上げた作者は、同校の家具工房の主任教官に就任した。1937年の米国亡命後、ハーバード大学で教鞭を執った作者は、数世代にわたって建築家・デザイナーに影響を与えた。自身の設計事務所の代表作として、旧ホイットニー美術館やパリのユネスコ本部、そして世界で初めてスチールパイプを用いた椅子でインテリア業界において革命をもたらした象徴的な『ワシリーチェア』などを手がけ、多様かつ力強いデザインで知られるようになった。小規模なものから大規模なコミッションを同時にこなす多くの建築家と同様に、作者は住宅建築をあらゆるデザインのアイデアの実験台として用いた。作者の住宅建築は、その質と量に驚かされるだけでなく、一連の作品を辿ってみると、作者の空間的な卓越性と専門性の発展を伺うことができる。

作者の住宅は、空間の相互作用と大胆な素材の並置によって世界中の住宅建築や何世代にもわたる若手デザイナーに多大な影響を与えた。本書は、米国、ドイツ、スイス、英国の住宅、ヴィラ、アパートなど25のプロジェクトをドローイング、図面、写真など、豊富な資料を通して分析している。建築家、学生、現代建築の愛好家にとって欠かせないレファレンスである本書には、参考文献のほか、作者の完成した住宅作品および未完成の住宅作品の完全カタログも収録されている。