南アフリカ人アーティスト、イグシャーン・アダムス（Igshaan Adams） の作品集。2022年4月から8月にかけて「シカゴ美術館（Art Institute of Chicago）」で開催された展覧会に伴い刊行された。作者の初期の作品を掘り下げ、2009年以降に制作された多岐にわたるメディアを用いた作品群を紹介する一冊。

アラビア書道、薔薇、（セルフ）ポートレイト、スーフィー（イスラム神秘主義）のシンボル、言葉本来の意味・もしくは比喩的な道などをはじめとした作品に繰り返し用いられるモチーフの研究に加え、本書では、織物の彫刻的な応用、南アフリカの黒人の家庭内や内面性に関連するリサイクル素材の採用、インスタレーションにおけるギャラリーの壁や床の使用など、作者の物質的関心にも光を当てている。キュレーターであるヘンドリック・フォーカーツ（Hendrik Folkerts）はこの人物の近年の作品を入念に調べ、存在・不在・痕跡とのつながりを取り上げる。作者自身が手がけたビジュアル・エッセイでは、ギャラリーでの展示では気づかれないであろう細かい部分まで読者が触れられるようにしている。他にも収録するエッセイでは、南アフリカの歴史的かつ政治的文脈、特定の作品、個々の創作意図、物質性、物語を深く探求している。