GONG CO. by Christian Patterson
アメリカ人フォトグラファー、クリスチャン・パターソン(Christian Patterson)の作品集。二年に一度開催されるスイス最大の屋外アート写真フェスティバル「Images Vevey」の印刷事業「Éditions Images Vevey」との共同刊行となる。
本書は、ミシシッピ川とヤズー川に挟まれた領域「ミシシッピ・デルタ」の中心にある家族経営の食料品店の衰退と崩壊を描いた「メメント・モリ」の碑的作品である。
作者が2003年にこの店と初めて出会った時、まだ営業はしていたが時が止まっているかのようで、棚には賞味期限切れの商品が散乱していた。それはまるで意図的に作られていないタイムカプセルのようであり、「いつかすべてのデパートは美術館となり、すべての美術館はデパートになる。(Someday, all department stores will become museums, and all museums will become department stores)」というアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)の預言めいた言葉を不気味なまでに現実のものにしていた。その後20年間、作者はこの店が緩やかに荒廃していく様子をコツコツと記録した。2013年にその扉は閉ざされ、中に置かれたものはそのまま店内に残されていた。作者は、2019年の終わりに店舗が根こそぎ解体されるその日まで、店に通い続けた。
本書は、直感的かつ視覚的にこの場所へと観る者を導き、探索を促す。作者が描き出す、現場とスタジオを折衷的に混ぜた写真、モノタイプ(版画)、騙し絵のようなコラージュ、暗号のような手書きのノートなどを通じ、本書はダイナミックかつ多層的な体験を提供する。マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)の「レディ・メイド」やディーター・ロス(Dieter Roth)の「Flacher Abfall(フラット・ウエスト / Flat Waste)も想起させ、本書は解釈の機会を限りなくもたらしてくれる。
本という形式は、それ自体が彫刻作品として機能する。作者は年季の入った擦り切れている緑色の布を表紙に用い、食料品を入れる袋に似た茶色の紙をカバーにして包み、アーティスト・ブックというオブジェを作った。各ページの仕上がりは、作者の細心の注意が払われて制作された証であり、カビや変色の跡など、まるで南部の厳しい湿度によって生じたような要素が終始埋め込まれている。
本作は、ウィリアム・エグルストン(William Eggleston)、ウォーカー・エヴァンス(Walker Evans)、ウィリアム・フォークナー(William Faulkner)、ハーパー・リー(Harper Lee)ら偉大な写真家や作家たちの手によって大衆の想像力の中へと形作られた場所、すなわちアメリカ、そして「南部」における芸術的表現に、我々がどのように関わっているのかという深い探求なのである。しかし作者は、そのすべてが持つ無常さ、そしてアメリカという国そのものが持つ今や使い古されてしまった感覚について、より深く徹底的に掘り下げている。