ドイツ人アーティスト、トーマス・シュトゥルート（Thomas Struth）の作品集。同名の展覧会（2016）に伴い出版され、展示された30作品を含む65作品を収録。1978年から2010年の作品を集約した回顧展以降に作者が撮影した写真で構成されており、近年の作品を最も広範囲に網羅しているといえる一冊。作者は、建築・ポートレート・風景、最近では科学技術研究所など、それぞれ異なる分野においてその場単体のイメージを独自の視点で作り上げるスタイルで知られて、本書では作者にとって今最も重要とされる研究テーマ「テクノロジーと建造的な風景」を表現する為、徹底的に自身の持つ多様な問い、疑問を追求している。物理学研究所や、製薬工場、宇宙ステーション、造船所、核施設、手術室といった、技術産業や科学的な研究が生み出した場所を撮影。特に現代社会において革新的とされている機器や、人類の英知を結集したような建造物を選んでいる。このような被写体を写した作品は、構造的な複雑性の記録を通して革新や実験の美学とは何かを探り、先進的な技術が及ぼす目に見えない支配力や影響力の構造を示唆している。