THE OUTLANDS, SELECTED WORKS by William Eggleston
アメリカ人フォトグラファー、ウィリアム・エグルストン(William Eggleston)の作品集。本書は2022年11月から12月にかけてニューヨークのギャラリー「David Zwirner」で開催された展覧会に伴い刊行。カラー写真の先駆者である作者が1960年代から1970年代にかけて撮影した未公開作品を約100点収録する一冊である。
1969年から1974年の間に作者が撮影したシリーズ『The Outlands』は、作者がその後何十年にもわたり展開させていく革新的な視覚テーマないし視覚的語彙を確立させたものである。作者のレンズを通して、神話的でありながら進化し続けるアメリカ南部の旅の生き生きとした色彩と深いノスタルジーが細部まで響きわたり、息を呑むような素晴らしい作品として描かれる。看板、車、道端の風景など作者のモチーフはアメリカの風景を象徴するものとなり、後世のフォトグラファーたちに影響を与えた。ドアを開け放ち、開放的で広大な田園風景の中に停められたウッドパネルのステーションワゴン、ミシシッピ州サムナーの家で哀調を帯びたインテリアと共に写る作者の祖母。忘れ難いほどのイメージを徹底的にセレクトし収録した本シリーズは、ダイナミックかつ実験的な作者の活動を象徴するものである。作品の多様性はその独特な風景写真を再び活性化させ、変わりつつあるアメリカ南部に新たな視点を生み出している。
コダクロームで細部まで描かれた鮮やかな90枚のイメージと共に、アメリカ人作家であるレイチェル・クシュナー(Rachel Kushner)によるフィクション小説も掲載。アメリカ深南部(ディープサウス)をヒッチハイクで旅する者たちが描かれている。近現代美術・写真史を専門とするロバート・スリフキン(Robert Slifkin)は、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)、ダン・グレアム(Dan Graham)、ジャスパー・ジョーンズ(Jasper Johns)、ロバート・スミッソン(Robert Smithson)の作品群との類似点を提示し、作者の作品の美術史的意義の再考する。ウィリアム・エグルストン3世(William Eggleston III)による序文では、本シリーズにおいてイメージを選び、配列するというプロセスについて重要な洞察を語っている。