エチオピア生まれのアメリカ人アーティスト、ジュリー・メレツ（Julie Mehretu）の作品集。2023年9月から11月にかけてロンドンのギャラリー「ホワイト・キューブ・バーモンジー（White Cube Bermondsey）」で開催された展覧会に伴い刊行された。新作「TRANSpaintings」（2023-24年）を含む、3つの作品群を豊富かつ詳細に紹介する本書は、不可解で多層的な作品の記録を細かに見せている。

昨今の政治的事象を記録した写真や制作途中のスタジオの風景を写した写真から成るモノクロ写真のシークエンスは、構成における初期段階をその先へと導く多様な素材を見つけることができる。「ホワイト・キューブ」のディレクターであるスザンナ・ハイマン（Susannah Hyman）のほか、ミュージシャンで「フローティング・ポインツ（Floating Points）」の名で知られるサム・シェパード（Sam Shepherd）によるテキストを掲載。サム・シェパードは作者の豊かな表現力に対し、音楽性のパラダイムで構成される変遷を辿りながら、その分野の垣根を越えた創造性を考察している。本書のデザインは「Ben Weaver Studio」が手がける。