WADE GUYTON by Wade Guyton
アメリカ人アーティスト、ウェイド・ガイドン(Wade Guyton)の作品集。30を超える最新の作品に大規模なキュレーション・プロジェクトを加えた一冊。フランス人小説家・哲学者のトリスタン・ガルシア(Tristan Garcia)による詳細なエッセイを収録。作者は彫刻、ドローイングそしてインスタレーション作品を制作してきたが、今回は「絵画」という形式に限定。2015年から2016年の間に作られた抽象絵画に加え、明確に具象作品も見せることで、作者の作品群の中で新たなチャプターが開かれている。様々な大きさの作品を見せる本展の中心となるのは作者のスタジオで撮られた1枚の写真である。手前に置かれているのは建築家であり家具デザイナーのマルセル・ブロイヤー(Marcel Breuer)の椅子のチューブ状の骨組みを改造した彫刻作品である。背景には、作者の「Black Paintings」と真っ白な壁も写る。本シリーズは、ビットマップファイルを接写したものと一緒に、ニューヨークにあるスタジオの木の床を用いた作品で完成する。
「自分の作品をまた異なる角度から理解すべく、スタジオで撮影し、そのイメージから絵画作品を制作するようになった。自分が使っているものと共に写真を用いるのは完全に理にかなっている。今使っているプリンターは、昔は暗室で現像していた写真の代わりとなるように作られている。画像というものの質を上げるはずの技術的進歩を装った、ある種の敵対的な商業活動なのだ。」
日々の制作から引き出された「伝記的な要素」が突発的に増えたことは、通常作者が展開している図像(イコノグラフィー)を崩壊させ、新たな視点を導き出す。自身の作品の『ミザナビーム(MISE EN ABYME)』(※註)を通して「イメージ」としての芸術の未来とともに、「製造」と「制作」の連鎖そのものに対し問いかけ続けている。
※註 「紋中紋」を意味し、絵の中のモチーフやテーマの中に同じようなイメージが入れ子構造で入っている表現、手法で、その情景が無限に続いているようにも見える。