WRITING BY ARTIST by William Wegman
アメリカ人アーティスト、ウィリアム・ウェグマン(William Wegman)の作品集。作者は、米国のホイットニー美術館、ウォーカー・アート・センター、メトロポリタン美術館やパリのポンピドゥーセンターなど、世界各地で個展が開催されたほか、セサミ・ストリートやサタデー・ナイト・ライブなどのテレビ番組の映像制作でも知られている。本書は、作者の言語に対する長く、不思議な関係に焦点を当てた初の作品集。1970年代初頭から現在に至るまで、これまで知られることがなかったテキスト、ドローイング、初期の写真などが満載の1冊。ニューヨークを拠点に活動するアメリカ人アーティスト、作家、アーキビストのアンドリュー・ランペルト(Andrew Lampert)によって線密に編集された本書は、典型的なエッセイ集とは異なり、何らかの形で言葉を取り入れている作品が収録されている。そのテキストは、ときには単純にキャプションや手書きの言葉であるが、全てライティングと言語に関連している。
本書は、作者の世界へ入る入り口が幅広く設けられている。中には、見覚えのある初期の写真作品も収録されているほか、無関係の言葉をプリンセス・クルーズの便箋に打ったものや、レストランの口コミ、キュレーターが書き下ろしたエッセイに対するウィットに富んだ注釈、古代の履き物に関する考察、意図的な誤訳、書き直されたグリーティングカード、実在する商品の架空広告など、意外な文体が愉快に繰り広げられる。
究極的に言えば、本書はアーティストのライティングの論理を変え、その可能性を拡張させている。作者の後期の作品にしか馴染みのない人々にはそのほかの作品に新たに焦点を当て、既に知識がある人々にとっては、この作者の狂気の独創性を思い起こさせるものである。つまり、作者について知っていることも知らないことも奇妙に魅力的なこの1冊に都合よく収録されている。