20 FLOWERS AND SOME BIGGER PICTURES by David Hockney
イギリス人アーティスト、デイヴィッド・ホックニー(David Hockney)の作品集。Covid-19の規制が世界的に施行され始めた2020年初頭、作者はフランス・ノルマンディーの自宅兼スタジオで隔離生活を送っていた。その地で作者は、2020年に初めてiPadで制作した作品シリーズをさらに発展させ、本作を描いた。日々の観察からインスピレーションを受け、作者は、iPadという特有の即時性を持つメディアに没頭し、自宅や四季の移り変わり、周囲の田園風景を描いた作品を大量に生み出すことができた。 本作は、2022年11月にロンドンの「アネリー・ジュダ・ファイン・アート(Annely Juda Fine Art)」での展覧会の開催を皮切りに、同時期にパリの「ギャルリー・ルロン(Galerie Lelong & Co.)」、シカゴの「リチャード・グレイ・ギャラリー(Richard Gray Gallery)」、ロサンゼルスの「L.A. ルーバー(L.A. Louver)」で共催、ニューヨークの「ペース・ギャラリー(Pace Gallery)」で2023年1月から2月まで開催した展覧会で全5都市をまわる旅を締めくくった。本書は一連の展覧会の開催に伴っての刊行となる。作者によるエッセイも収録。
各ギャラリーでは、iPadで描いた20点の花の静物画と数点の風景画をインクジェット・プリントで展示。この一連のシリーズから、作者の手が描く存在感と、実際よりも大きな構図で描くために意図的に用いているテクニックが見て取れる。花々はその儚い静寂感を捉えているのに対し、風景画は作者が置かれている田園風景の広大さを描き、鑑賞者に没入感を感じさせる。作者が描き出す独特の時間と空間の感覚は、一瞬を縛り付けているものにせよ複数の視野から生み出されているものにせよ、バイユーのタペストリーや17世紀における中国の絵巻物からアンリ・マティス(Henri Matisse)の静物画に至るまで、美術史におけるさまざまな実例から導き出されている。
展示作品の中の大型フォトドローイング作品の一つ「25th June 2022, Looking at the Flowers」は、この展覧会群での発表が初公開となる。本書の表紙にもなっているこの作品は、作者がアームチェアに座る姿が左右二度描かれ、サロン風にネイビーブルーの壁に飾られた20点の花の静物画を眺める。作者の描く独特なパノラマは、作者が自身のことを語るような作品であり、また鑑賞者を見慣れたようでいて見たことのないような世界へと引き込んでいく。
「これは写真的ではありますが、決して普通によく見られる写真ではないのです。(...)私が『フォト・ドローイング』と呼ぶこの作品は、より立体的な効果を出すための手法なのです。一度に全てを見る通常の写真と異なり、これは時間を通じて鑑賞しなければならないものであるためです。(...)ほとんどの人は、写真というものが究極のリアリティを描写する手段だと思っていたのではないでしょうか。皆、これが全てだ、これで完結している、と思っています。でもそれは違います。私はそうではないと確信しています。しかし、そのように考える人はあまりいないですよね。」 ー デイヴィッド・ホックニー
EXHIBITION:
デイヴィッド・ホックニー展
会期:2023年7月15日(土)- 11月5日(日)
休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
時間:10:00-18:00
開催場所:東京都現代美術館 企画展示室 1F/3F
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