アメリカ人アーティスト、サラ・ジー（Sarah Sze）の作品集。本書は、国際的に高い評価を受けてきたアーティストである作者による絵画作品の包括的な考察をまとめた、初にして唯一のモノグラフである。

1990年代後半から作者は自身のトレードマークとなる視覚言語を発展させ、彫刻から絵画、ドローイング、版画、映像やインスタレーションにまでいたるダイナミックな作品群を以てアートの静的な性質に抗ってきた。

近年の作者は、最初期に学んだ媒体である絵画へと立ち返っている。描いたものやコラージュした素材を配置した、広大さを感じさせるその抽象的な風景は、常に新たな視点を生み、分解し、進化させる視覚的な世界を探求するものである。その絵画は多くの人に望まれ、世界中の名だたる施設や美術館のパーマネントコレクション（永久収蔵品）となっている。

作者の影響力と制作プロセスを考察すべく、美術史家、評論家、キュレーターであるマーク・ゴッドフリー（Mark Godfrey）とキュレーターのティナ・パン（Tina Pang）によるエッセイ、そして絵画制作における理論的な土台についての対話を展開した「シカゴ現代美術館（Museum of Contemporary Art, Chicago / MCA）」のディレクターであるマデレイン・グリンステン（Madeleine Grynsztejn）によるインタビューを収録。

各冊にはナンバリングと作者による手書きのサインが入れられており、布張りのスリップケースに収まり精妙に彩られた贅沢な一冊である。作者との密な協力の元、その絵画制作に捧げる作品集に仕上がっている。