TROPHY LIVES: ON THE CELEBRITY AS AN ART OBJECT by Philippa Snow
イギリス人作家、評論家、エッセイストであるフィリパ・スノウ(Philipa Snow)の作品集。
著名人がすばらしいミューズとなることはよく知られたことである。リンジー・ローハン(Lindsay Lohan)、ロバート・パティンソン(Robert Pattinson)、マイリー・サイラス(Miley Cyru)にインスパイアされたシリーズを描き上げたリチャード・フィリップス(Richard Phillips)の作品や、レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)を等身大に象った蝋の作品を最近発表したウルス・フィッシャー(Urs Fischer)を思い浮かべてほしい。アートコレクターのピーター・ブラント(Peter Brant)がその妻であるスーパーモデルのステファニー・シーモア(Stephanie Seymour)の彫刻を、意地悪な風刺を好むイタリア系アメリカ人アーティスト、マウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan)に依頼したこともすでに周知の事実だろう。厳密に言えばその作品名は「Stephanie」だが、業界内ではむしろ「Trophy Wife(トロフィーのワイフ)」として知られている。この彫刻には150万ドルもの値がつけられたが、シーモア自身の方には1億ドルの価値があると噂されている。どちらが「よりよい」アート作品を名乗れるのか、考えたくもなるのではないか。
この図版入りのエッセイで作者は、すべての偉大な、あるいは象徴的なセレブリティはみな、彼ら自身が形づくり、彼ら自身が権威を与えた、彼らの内にあるものがまさしく芸術作品としてみなせるのではないかと問うた。著名人の私生活がより可視化され、それゆえに、より芸術的に演出されている今、著名人自身がコンテンポラリー・アーティストによる作品とあらゆる面で遜色ないほどに複雑で、コンセプチュアルで、説得力のある現代美術の媒体として、神話を生み、イメージを作り出すひとつの形としてますます成り立ちつつあると、過去20年間にわたる広範な文化的文脈をもとに論じている。
本書はイギリスの出版社「MACK」が刊行する、文化論者やキュレーター、アーティストが1つのテーマや作品、思考をテキストで掘り下げるシリーズ「DISCOURSE」の1冊として刊行されている。
「最も偉大なアート評論と肩を並べる一冊。私たちの世界を形づくるリビドーの力を見つけ出す才にあふれた不朽の理知」ーナタリー・オラー(Nathalie Olah)
「Trophy Livesは、名声、美、知覚にまつわる見事な論考である。…スノウは、重要な文化評論家としての地位を確立させた」ーローレン・エルキン(Lauren Elkin)
「読めば読むほど読みたくなる、豊かかつインターテクスチュアル(間テクスト性)な散文で書かれた、現代アートと有名人のその様々な組み合わせにおける、コンバージェンスの徹底的でいて予想外な分析。しびれる一冊だ」ーソフィー・コリンズ(Sophie Collins)