アメリカ人アーティスト、ピッパ・ガーナー（Pippa Garner）の作品集。2023年11月から12月まで、ニューヨーク最古のオルタナティブ・スペースである「ホワイト・コラムズ（White Columns）」で開催された回顧展に伴い刊行された、作者にとって初の包括的なモノグラフ。

写真、イラストレーション、エフェメラ、書き下ろしの文章を通じて、1960年代後半から2010年代初頭までの50年に及ぶ作者の学際的な芸術活動を概観した一冊。「The Backwards Car」や「the Half-Suit」などの代表作に加え、未公開の写真やエフェメラを網羅した本書は、人生と実践に対する妥協のないアプローチによって、非常に影響力がありながら過小評価されてきたこのアーティストが、いかにしてひとつに縛られることなく、イラストレーション、エディトリアル、テレビ、芸術といった様々な分野を自在に行き来できるようになったかを紹介する。

1942年シカゴ郊外に生まれ、以前はフィリップ・ガーナー（Philip Garner）という名で知られていた作者は、数十年にもわたってアメリカ式の消費主義を風刺しつつ、日常生活の喜びと個人の解放を具体的な作品にしてきた。また独自のユーモアのセンスと実験的なものづくりに対するコンセプチュアルな傾倒によって、フォーディズムから薬物ポルノ時代まで、大量生産された素材を変化させ、商業的な二元論を覆すことで、物質的な生活の一過性の本質と自らのトランスパーソナルなアイデンティティを明らかにしてきた。

本書は作者の先鋭的な活動に関する初の批評的概論であり、ファッション、アート、カルチャーなどで活躍してきたエディターであり作家のグレン・オブライエン（Glenn O’Brien）、「ヘイワード・ギャラリー（Hayward Gallery）」のキュレーターであるラルフ・ラゴフ（Ralph Rugoff）、アーティストでありデザイナーのヘイデン・ダナム（Hayden Dunham）ら著名人が提供した作者に関するプレス資料や、作家のショーラ・フォン・ラインホルト（Shola von Reinhold）、小説家でありノンフィクション作家、ジャーナリスト、編集者のドディー・ベラミー（Dodie Bellamy）、アーティストでありキュレーターのフィオナ・アリソン・ダンカン（Fiona Alison Duncan）ら受賞歴のある同時代の3名の著作家による書き下ろしの文章3点を収録。

本展は、2022年秋にドイツの「クンストフェライン・ミュンヘン（Kunstverein Munich）」で開催されたヨーロッパ初の個展をベースに、スイスの「クンストハレ・チューリッヒ（Kunsthalle Zürich）」（2023年）、フランスの「FRACロレーヌ（FRAC Lorraine）」（2023年）、「ホワイト・コラムズ」（2023年）で開催された巡回展である。