ISLAND ZOMBIE: ICELAND WRITINGS by Roni Horn
「よく聞かれますが、自分でもどうしてアイスランドを選んだのか分かりません。最初に通いはじめた理由や、なぜ今も訪れているのかも。実を言うと、アイスランドが私を選んだのだと思っています」―序文より
アメリカ人アーティスト、ロニ・ホーン(Roni Horn)の作品集。作者が初めてアイスランドを訪れたのは1975年、19歳の時だった。その時から作者は1本の木も生えていない荒涼としたアイスランドの大地に魅せられ、作品を作り続けてきた。詩情溢れる考察、挿絵、逸話、イラスト入りのエッセイを通じて、生涯をかけて見つめてきたアイスランドの自然の本質を表現した1冊。これらの要素が1つになって、手つかずの自然が残る地が持つ、言葉では言い表せない抗いがたい力を探求した、いつまでも心に残る世界観を形成している。また、1つの島とその雰囲気が長い時間の中でいかにして作者の心の核を占めるようになっていったのかが書き表されている。 今ここに存在することについての瞑想であるこの本で作者は、深い意味を持つものから楽しいもの、不条理なものまで、自らの体験を生き生きと語っている。暴力的な風、攻撃的な鳥、氷山の圧倒的な存在感、様々な形であらゆるところに存在する水といった自然現象と変動する気候を切り取った鮮烈な描写から、アイスランドが作者の創造と精神の生活になくてはならない場所であり続けてきたことが伝わってくる。この島のドラマティックな風景は自給自足や孤独について考えさせる。作者の思索は、エル・グレコ(El Greco)、エミリー・ディキンソン(Emily Dickinson)、ジュディ・ガーランド(Judy Garland)、ウォレス・スティーブンス(Wallace Stevens)、エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)、ウィリアム・モリス(William Morris)、レイチェル・カーソン(Rachel Carson)などの文化人に通じるものがある。自然の崇高なエネルギーを芸術に昇華する一方、アイスランドの大自然を脅かす工業化や人工物を通じて、作者は消費、破壊、喪失といった問題に向き合っている。 未知のものに出会う感覚をかき立て続ける、外界とは切り離れされたこの地に寄せる想いに満ちた本作には、いつの時代も新鮮で、かけがえのないものであり続けるアイスランドの野性的な美しさが描き出されている。
記事:ロニ・ホーンインタヴュー「水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」(IMA ONLINE)
EXHIBITION:
ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?
会期:2021年9月18日(土) - 2022年3月30日(水) 会期中無休
時間:9:00-17:00
開催場所:ポーラ美術館 展示室1, 2 遊歩道
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※本展は終了いたしました