THE MUSEUM OF WES ANDERSON by Wes Anderson, Johan Chiaramonte, Camille Mathieu
アメリカ人映画監督、ウェス・アンダーソン(Wes Anderson)の作品集。映画ディレクターであるヨハン・キアラモンテ(Johan Chiaramonte)と美術史家のカミーユ・マチュー(Camille Mathieu)による共著作。
この「美術館」は、読者をウェス・アンダーソンの世界へと奥深く誘う一冊である。映画のスチル写真、アクセサリー、衣服、記念品、書籍、奇妙で愉快なエフェメラなど、多彩かつその世界を網羅した品々が満載である。我々を思わず没入させるこの宝箱は、作者が影響を受けてきた文学、音楽、映画について並々ならぬ洞察を与え、インド映画やフランスのポップミュージック、イタリアのスピードカー・レース、「ニューヨーカー(The New Yorker)」誌、J・D・サリンジャー(J. D. Salinger)作品など、その領域は多岐にわたる。
「美術館」の所蔵品には、作者の映画作品『フレンチ・ディスパッチ(The French Dispatch)』(2021年 / 日本での公開は2022年)のカフェ「Le Sans Blague」のハムサンドイッチのレシピや、『ムーンライズ・キングダム(Moonrise Kingdom)』(2012年 / 日本での公開は2013年)のキャンパーたちが好んで飲んでいた「タン(Tang)」の歴史、「グランド・ブダペスト・ホテル(The Grand Budapest Hotel)」(2014年)のコンシェルジュがつけていたコロン「L'Air de Panache」の秘密などが並ぶ。読者は、バラライカ、「ビートルズ(The Beatles )」、ベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten)といった音楽とのつながりを発見し、ハル・アシュビー(Hal Ashby)、サタジット・レイ(Satyajit Ray)、オーソン・ウェルズ(Orson Welles)、マイク・ニコルズ(Mike Nichols)、フランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)による映画作品からいかに影響を受けてきたかを知ることとなる。作者の熱烈なファンをも驚かせる情報が詰まったこの色とりどりの宝庫は、厳然たる充実した資料集として確立しており、同時に、奥深いエンターテインメントの一つとして仕上げられている。