MOUTH WAVE by Victoria Morton
スコットランド人アーティスト、ヴィクトリア・モートン(Victoria Morton)の作品集。2014年にラットホールギャラリーで開催された展覧会「Mouth Wave」に伴い刊行された。
近年は一年の三分の一をイタリアで過ごし、ファッションブランドETROとのコラボレーションも話題になっています。一見カラフルな抽象画に見える作品ですが、モートン自身はフォークロールや逸話、また物語に関心を持ち、一つ一つのペインティングに何かしら具体的な空気感を作り出したいと考えています。つまりそれは私たち見るものが作品に入り込み、そこを舞台に作品の一部のような気持ちになり、あるいはその空気の中で主人公にさえなる時間を提供してくれるのです。美しいだけではなく、見ているうちにベールの先のものが見えてくるような不可思議な世界がモートンならではのリアリズムと言えます。
以下プレスリリースより抜粋
ラットホールギャラリーでは2014年2月14日(金)より5月25日(日)まで、グラスゴー(スコットランド)を拠点に活動する作家、ヴィクトリア・モートンの個展を開催いたします。大型の新作ペインティングとアッサンブラージュの立体作品で構成される本展は、日本で初めて彼女の作品を目にすることができる機会となります。
1971年、グラスゴー生まれのヴィクトリア・モートンは、絵画というジャンルにおける視覚的・空間的な可能性の拡張、そして観者に及ぼす心理的作用のあり方を探究し続けている作家です。彼女のペインティングは、その緻密な細部や厚みのある筆触、水彩画のような油彩の扱い方から、抽象絵画でありながら、歴史や音楽、日常生活などが反映されて描かれたキャンバスには、身体などの具象的な要素を見てとることができます。鮮やかで繊細な輝きを放つ色彩のレイヤーと、運動・反復・断片化といった方法とを組み合わせる彼女のペインティングは、心理や感情を隠喩的に観者の中に呼び起こします。
立体作品では、例えば楽器、衣服、梯子であれば、「鳴らす」「着る」「上る」というように、パフォーマンスの次元を喚起するオブジェが用いられる点に特徴があります。異なるオブジェが絡まり合ったアッサンブラージュは、個々のオブジェ同士がある連続性をもつものとして捉えられており、オブジェの複雑な絡まりが観者の視線のなかで統合されることを求める点では、ある種のリアリズムがそこで創出されていると言えます。
「複雑なイメージを生み出したり崩したりといった、精神的なエクササイズへの欲求に加えて、身体的な衝動が私を制作へと駆り立てている」とモートンは言います。制作過程における作品の変化に加えて、制作時における行きつ戻りつの時間感覚までもが織り込まれた彼女の作品からは、私たちの日々の生活の中で現れては消えてゆく、心理や意識・無意識的な振舞いが示唆されているのです。
ヴィクトリア・モートンは世界各地で展覧会を開催するほか、パフォーマンス集団Elizabeth Goの一員としての共同制作や、バンドMuscles of Joyで実験音楽の演奏なども行なっています。Glasgow School of Artで1993年に絵画文学士号、1995年には修士号を取得し、現在はグラスゴーとフォッソンブローネ(イタリア)で制作を行なっています。