ロサンゼルスを拠点とするアーティスト、フリードリッヒ・クナス（Friedrich Kunath）の作品集。ウィットに富んだ絵画と彫刻を俯瞰する、初単独書籍。1990年代後半から2000年代前半にかけて一躍有名になった作者は、ありふれた日常と崇高な体験を組み合わせた、詩情溢れる美しい作品を作り続けてきた。過去15年間の作品を俯瞰した初作品集である本書を見れば、この作家がどのようにして欲望、孤独、不安といった人間の根源的な感情の本質を捉え、遊び心を持って表現しているかが理解できるだろう。この世界の中で自分の道を見つけようとあがく人間を描いたシーンは滑稽なほど悲劇的である。絵画からインスタレーション、映像作品に至るまで、ジャンルだけでなく作品の雰囲気までも自由自在に変化させる作者だが、そのスタイルの特徴である、メランコリーに包まれた機知とユーモアは一貫して変わることがない。作者自分の全ての作品の根底に流れている様々な考えについて考察し、表現手段は違っても概念的には一つにつながっている作品を選んだ。また時系列ではなくテーマごとに8つのチャプターにまとめることにより、新しい解釈を提示した。本書には、美術史家のジェームズ・エルキンズ（James Elkins）によるヨーロッパ絵画の現在および昔からの伝統を背景に歴史的な観点から説かれた作品の解説や、作者に影響を受けた詩人のアリアナ・ライネス（Ariana Reines）による詩、作家のジェームズ・フライ（James Frey）がその人柄に触発され書き下ろした短いエッセイの他、プロテニス選手のジョン・マッケンロー（John McEnroe）と、テニスに並々ならぬ情熱を持つ作者による対談を収録。