THE ONLY PORTRAIT I EVER PAINTED OF MY MOMMA WAS STOLEN by Henry Taylor
アメリカ人アーティスト、ヘンリー・テイラー(Henry Taylor)の初作品集。1992年以降の作品200点以上を収録し、その業績を包括的に紹する一冊。今や伝説的な作家となった作者は、この30年間にニューヨークから、ロサンゼルス、ヨーロッパ、アフリカへと旅をしながら制作を続け、目にしたものを記録してきた。作者はアーティスト、ミュージシャン、作家、パフォーマーに加え、精神病院で働いた10年の間に出会った友人たちをモデルにすることもあれば、アフリカ系アメリカ人の文化的著名人や歴史的な出来事から、警察の暴力や刑務所を取り巻く複合産業といった悲惨な現実を扱う政治色が強いテーマまで、実に幅広い題材やモデルを描いてきた。絵画、彫刻、インスタレーションなどの作品の写真には、作品制作時の覚書やスケッチ、考え方がストレートに伝わってくる言葉など、本人の手書きのメモが配置されている。また、コンセプチュアルアートを代表するアーティストであり、カリフォルニア芸術大学教授のチャールズ・ゲインズ(Charles Gaines)、ピューリッツァー賞受賞随筆家、批評家のレイチェル・カージ・ガンサ(Rachel Kaadzi Ghansah)、作家でありキュレーター、ハーバード大学美術史、建築学科およびアフリカン・アメリカン研究科の助教授サラ・ルイス(Sarah Lewis)、王立文学協会のフェロー、アメリカ芸術文化アカデミーの海外名誉会員であり、小説家、随筆家、短編小説家のゼイディー・スミス(Zadie Smith)によるテキストが、アメリカの真実、人種差別の恐怖、記憶、帰属感の本質に迫る。決定版ともいえる本書は、モデルをまっすぐに見据えその本質を明るみに出すポートレイトを称え、文化的な対立が起きている今の時代に一筋の光明を放っている。