A BLACK HOLE IS EVERYTHING A STAR LONGS TO BE by Kara Walker
高い評価と影響力を誇るアメリカ人アーティスト、カラ・ウォーカー(Kara Walker)の作品集。作者のドローイングを堪能できる貴重な1冊に仕上がっている。1993年から2020年の間に紙に描かれた600点以上の作品を収録。その大部分が作者によって守り抜かれてきた私的なアーカイブに含まれていたものであり、本として出版されるのは今回が初めてである。近年巨大彫刻のインスタレーションで名を馳せた作者だが、今なおその創作活動の基盤になっているのは自然に湧き出てくる生々しい感情を紙にぶつけたドローイングである。本書は、作者の世界観、影響を受けたものやテーマを深く理解するためのまたとない機会を提供している。 作者は紙にブラシで描くことが多いが、これによって自由に流れる開放的な動きが生まれている。小さなスケッチ、習作、コラージュ、丹念に仕上げられた大作と、日記的なメモ、インデックスカードにライプライターで書かれた省察、夢日記などが隣り合って配置されている。それぞれのページに漂う親密さは、作品の驚くべき多様性と鮮やかな対比をなしている。本書のページをめくり、作者が自分の思考を紙上で展開し、人物や物語を描き換え、作り出し、変化させていく様を観察しているうちに、作者の芸術の根源にあるものが見えてくる。アーティスト、アフリカ系アメリカ人、女性、母親という自分自身のアイデンディディを細やかに分析しながら、作者はその個人的な重要性と今起きている出来事を背景とした社会的な意味の両方を探る。社会的な意味の問いかけは、バラク・オバマ氏の大統領時代と今も続く影響を反映したセンセーショナルな新作ポートレイトに特に強く見られる。 デザインはジュネーブのギャヴィエ&シ(Gavillet & Cie)が手がける。600点以上のイメージに加え、バーゼル美術館の版画・ドローイング部門の責任者アニタ・ハルデマン(Anita Haldemann)、展覧会キュレーターであり文化史家のモーリス・バーガー(Maurice Berger)、批評家・アーティストのアリア・ディーン(Aria Dean)らによるエッセイも収録。 本書はバーゼル美術館(2021年)、シルン美術館(2022年)、ティルブルフのデ・ポント現代美術館(2022年)で開催される巡回展に伴い、バーゼル美術館と共同出版された。