I GIVE YOU POWER by Rulx Thork
ニューヨークを拠点として活動するフォトグラファー、ラックス・ソーク(Rulx Thork)の作品集。イギリス人のキュレーター、ライター、アーティストでもあるデヴィッド・カンパニー(David Campany)のテキストを収録。
本書のタイトルは、ヒップホップ・カルチャーに絶大なる影響を与えたアメリカ人ラッパー、ナズ(NAS)が1996年にリリースした代表的セカンドアルバム「It Was Written」に収録された傑作「I Gave You Power」に由来する。この曲が本プロジェクトの背景にあるインスピレーションの一つであることから意図的に似せている。ナズの「I Gave You Power」は、都会のストリート・ライフを一つの銃の目線から描いた風喩の物語である。元々内気な性格であった自分がタイトルに「I GIVE YOU POWER」を選んだのは、カメラという存在が、以前なら足を踏み入れなかった場所へと一歩踏み出させてくれる「パスポート」であったからでもある。普段は私と会話をし始めないような人たちとコミュニケーションを取る自信を与えてくれ、被写体となり、文字通り彼らの生活をカメラで捉える全権を私に委ねてくれた。私のカメラは、人々に「信頼できる人物である」と私のことを思わせてくれた。というのも、アーティストというものは、社会的正義にまつわる問題を受け入れ、社会的に阻害された人々をサポートするようなリベラルな考えを持つ者であると捉えられることが多いからである。ジム・ゴールドバーグ(Jim Goldberg)、ラリー・クラーク(Larry Clark)、ダイアン・アーバス(Diane Arbus)、アーリーン・ゴットフリード(Arlene Gottfried)、ナン・ゴールディン(Nan Goldin)といった写真家たちはみな、そのような伝統の一部であり、私が写真を始めたときにインスピレーションを与えてくれた。本作は、都市をテーマにした三部作の第一弾であり、残り二作は一作目とは大きく異なるが、都市のストリート・ライフをテーマにした点では同様のものとなる。
-ラックス・ソーク