HATTFABRIKEN/LUCKENWALDE by Gerry Johansson [SIGNED]
スウェーデン人フォトグラファー、ゲリー・ヨハンソン(Gerry Johansson)の作品集。作者は写真、言い換えれば第三者が表現した特定の背景を通じて場所を発見することに長らく興味を持ってきた。作者を惹きつけ好奇心をかき立てたのはウォーカー・エバンス(Walker Evans)、ロバート・フランク(Robert Frank)、カール・グスタフ・ローゼンバーグ(Carl Gustaf Rosenberg)らのイメージだった。自ら写真を撮ることで記録に残された環境やオリジナルのイメージの歴史を検証し、時間と空間の中で既に語られた物語を拡張しようとする。『LUCHENWALDE』(2009、2011-12年)は、1986年に作者がアーティストのディック・ベングトソン(Dick Bengtsson)のポートレイトを撮影した時に交わした会話から始まった。ストックホルム近代美術館に収蔵されているベングトソンの絵画に『HAT AND CAP FACTORY』(1969年)がある。その元になったのは、スウェーデンの百科事典『SVENSK UPPSLAGSBOK』(1947–55年)に掲載されれうら一枚の白黒写真であった。そこにはベルリンの南50kmにある工業都市ルッケンヴァルデにある、建築家エーリッヒ・メンデルゾーン(Erich Mendelsohn)が設計した近代的な工場の建物が写っていた。このプロジェクトは、ルッケンヴァルデの公営住宅プログラムや、ユダヤ系であるが為にこの工場の売却を余儀なくされたヘルマン一族のことを物語っている。また、この建物がなぜここまで変わったデザインになったのか、第二次世界大戦中から1990年に破産するまで続いたこの帽子製製造業者の歴史についても語られている。2009年から2012年に渡ってドイツ・ルッケンヴァルデで撮影された写真を収録した本書は、2012年9月にスウェーデンのストックホルム近代美術館で開催された展覧会「MOMENT」に合わせて出版された。