OUR POCKETKAMERA 1985 by Seiichi Furuya [SIGNED]
日本人写真家、古屋誠一の作品集。クリスティーネ・フルヤ=ゲッスラー、光明・クラウス・古屋、ヨゼフィーネ・ゲッスラーと作者による写真を収録。
私は、2018年早々、屋根裏部屋の片づけ作業を開始した。数十年間も放置してあった雑物の山を整理して、不要物を廃棄するためだった。が、真の目的はクリスティーネの遺品を探し出して、整理保存することだった。大小様々な段ボール箱の中身を、手当たり次第に調べていくうちに、白い封筒の束が出て来た。中身は一本のフィルムごとに仕分けられたポケットカメラ・フィルムの束だった。私があえて、探し求めていたものではなく、その存在すらも私の記憶から消え去っていた発見物だっただけに、驚きと喜びで胸の高まりを押さえることが出来なかった。私はすべてのネガフィルムをスキャンし、プリントアウトした。眼前に広がる画像は息を呑むほど鮮やかに、失われたはずの過去の日々を蘇らせた。わずか13×17ミリの茶色いセルロイド上に眠っていた "人生物語 "が、現実のサイズで私の眼前に立ち現れた。1978年秋、私はクリスティーネにポケットカメラをプレゼントした。彼女はそれ以来、何度も中断しながらも、撮影を続けた。1985年に入って、3年ぶりに撮影を再開した彼女は、同年の秋に東ベルリンで自らの命を絶つ直前まで、ポケットカメラを使って数多くの写真を撮っていた。私は写真に写った出来事と、私とクリスティーネの手帳などにあった記録を頼りに時間の整理をしていった。この写真集では1985年に主にクリスティーネや当時4歳だった息子の光明が撮影したと思われる、ポケットカメラによる日常の断片が、時の流れに沿って解き放たれた。
本書は、作者が自宅の屋根裏部屋で見つけたさまざまな資料をもとに、2019年から着手した写真集プロジェクトの最新版となる。「
Chose Commune」から出版された『Face to Face』(2020年)、『First Trip to Bologna 1978 / Last Trip to Venice 1985』(2022年)を経て3作目となる。4作目の写真集『By Christine 1978-1985』(仮題)もすでに出版準備の最終段階に入っている。