オランダ人フォトグラファー、ヘンク・ヴィルスフート（Henk Wildschut）の作品集。

タイトル『AFSTAND』はオランダ語で「距離」を意味する。「距離を保つ」ことは、新型コロナウイルス感染症拡大のパンデミックをコントロールする上で世界中の政府が掲げたマントラであり、その措置は我々の社会に深い爪痕を残した。2020年、作者はオランダの「アムステルダム国立美術館（Rijksmuseum）」に「Document Nederland」プロジェクトの一環として依頼され、コロナ禍における「オランダの記録」を写した。医療従事者や科学者がどのように従事していたか、公共空間がどのように別の姿となったか、隔離や防護によって人同士の接触がどのように変貌していったか、オランダ政府がどのようにウイルスと対峙しそのことで我々にどんな影響を与えているのか、その舞台裏が見て取れる。その様子をあえて「距離」をとった場所から撮影することで、未曾有の事態によって刻まれた傷跡がより鮮明に切り取られている。不安や焦り、諦観に満ちた闇や虚無感を、観る者は複雑な思いを抱えながら感じるかもしれない。作者はそうやって表現することで、「距離」を埋めようとしている。

1975年以来、「アムステルダム国立美術館」は「Document Nederland」プロジェクトを継続している。毎年オランダ人フォトグラファーはその依頼を受け、その時に関心を集めている社会的なテーマに基づいて1年間にわたって問題を追い、記録している。