MY BLOODY HAND by Momo Okabe [SIGNED]
プレオーダー *1月入荷予定
日本人写真家、岡部桃の作品集。
生を見続ける旅、
どこかにありつつもこの掌にあるもの
本書は二つの写真群により構成されている。前半は岡部自身が流産した際に集めた血液を夜な夜な顕微鏡で覗く行為を繰り返し撮影されたイメージが続く。この行為は前作『イルマタル』(2020)の生殖補助医療を用い、自らの身体を介して行った妊娠・出産を「実験」のように捉えたものと通底する態度がある。顕微鏡を覗いた先に現れるイメージは、なにかの形を成そうとしているようにも、その形が崩れているようでもある。また、それらは豊かな色彩とともにあり、惑星の地表や星雲などを写した天体写真のようにも見えてくる。ここではないどこか遠くの場所を目で辿る岡部の行為を反復するようにページを捲る。
こうした果てしない旅のようなイメージを抜けると、後半は岡部の子どもたちを軸にした写真が続く。こちらの考えが及ばない不思議な生命体でありながら、それでも岡部の側に確かにいる存在として写る子どもたち。家族という枠組みの中でではなく、純粋に1人の他者として、とりとめのない生の一つとして子どもを見つめる視線。かれらの目には何が写っているのだろうか、そしてどこに行ってしまうのだろうか。子どもや岡部の身体を写したイメージとイメージの間にたびたび現れる風景写真は、これらが旅の終着点ではなくどこまでも続くものであることを示唆するように静かに佇んでいる。
1981年、東京都生まれの写真家・岡部桃は、自身の生の歩みと密接に関わりながら制作し、鮮烈な作品を世に残してきた。セクシャルマイノリティの恋人や友人などの親しい関係性を持つ被写体とかれらの側に伏す現実を収めた『Dildo』(2013)と『Bible』(2014)で、岡部は「Paul Huf Award」(FOAM museum、アムステルダム、2015)を受賞する。その次に発表された『イルマタル』は岡部自身の体外受精による妊娠・出産の記録も編まれたものである。4作目となる『MY BLOODY HAND』もこれまでの写真集と同様に重厚な質感を伴って出版される。この世界の矛盾や複雑さをそのままに、しかし見ようとしないと見えないものをありのままに、岡部の写真はそうであるからこそ見るものも無傷ではいられないのである。
ー原田桃望
Available for pre-order now. *It will be shipped in January.
Through vivid color and explicit imagery, Okabe narrates her journey to motherhood from her miscarriages to her first child
Known for her intimate and potent explorations into personal narratives of gender, sexuality and the modern relationship, Japanese photographer Momo Okabe (born 1981) floods her works with intensely rich colors, evoking an emotional reaction beyond a simple image. This heartwrenching photobook sees Okabe reckoning with the tragedy of her first miscarriage. Saving the blood and examining it under a photographic microscope, Okabe transforms her trauma into a surreal, otherworldly exploration of the inner world. These images are interspersed with Okabe's documentation of her subsequent pregnancies and the birth of her first child. Thus, My Bloody Hand serves as a bittersweet symbol of the dawning of a new chapter in Okabe's life: one of birth, motherhood, optimism and a future of uncertainty.