アメリカ人フォトグラファー、アーロン・シューマン（Aaron Schuman）の初作品集。本書は、作者個人の歴史を軸に、ポーランドの都市クラクフの民族学博物館の収蔵作品に光をあて、ポーランド特有の習慣や文化を描きだす。本書の主題は、アーティストの祖先に綿々と受け継がれてきた土地との結びつきや文化的な遺産とも言えるが、それにとどまらず、民俗学の分野において、またクラクフの民族学博物館において、こうして受け継がれてきたものがどのように取集、保存、アーカイブ化、記録、表現されているかについても考察する。本書では、博物館の収蔵品を撮った作品と、巨大なアーカイブから選出したイメージを一緒に見せ、この民族学博物館が有する伝統、歴史、アーカイブ、収蔵品、20世紀から続けられている取り組みなどを詳らかにしていく。これはまた好奇心と自己発見の物語、歴史と記憶の成り立ちの表現でもある。「我々自身と他者との両者が自らを振り返り理解を深めることができる場」でありたい、という民族博物館の目指すところに深く共感した作者は、個人的な物語を織り込むことで歴史の保存や記録の表現に新しい可能性を与えている。