THIS TRAIN by Justine Kurland [SIGNED]
アメリカ人フォトグラファー、ジャスティン・カーランド(Justine Kurland)の作品集。2005年から2010年にかけて幼い息子を連れて決行した、アメリカを横断するロードトリップを背景に、絡み合う2つの物語を表現した一作。物語の最初の糸口は、作者自身と息子を被写体とした一連の力強い大判写真である。これらの写真は、同道路、列車、インフラ、旅行者など、同時期に作者が撮った著名なイメージから解き放たれている。作者はこの写真を再検討し、家族と旅の反歴史として読み解くことを提案している。伝統的な家族アルバムの概念を覆した写真群は、アメリカの風景を横断することがどうしても必要だと感じていた作者の母方の家系と連動する、クィアな母性とイメージ制作の物語を語っている。
蛇腹状の製本で綴じられた本書の裏面には、作者が撮影したアメリカの風景を横切る鉄道の写真が配されている。これらのイメージは、鉄道は近代化の先駆けのシンボルであるというおなじみの神話を解体し、路線がしばしば周囲の自然に圧倒されながらも、日にさらされて草一つ生えないアスファルトの帯と不気味なほど完璧な平行線を後に残して風景を分断し、汚している現実に注意を向けている。冒頭と終わりにコンスタンス・デブレ(Constance Debré)とリリー・チョウ(Lily Cho)による書き下ろしのテキストを配した本書は、中国からの出稼ぎ労働者の歴史や人々に課せられた自由の代償を隠蔽する文化的寓話としてアメリカの風景を取り扱っている。さらに作者は、核家族、オープンロード、拡張の暴力、人間の手には負えない土地そのものが持つ力など、現代のアメリカ人の生活を根強く支配し続けている、密接に関連する一連のパラダイムを再評価している。
本作はサイン入りの1,000部限定発行。サインとシリアルナンバー入りの作者による手刷りプリントつき。