ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト、クリスティーナ・クォールズ（Christina Quarles）の作品集。2023年3月から9月にかけてドイツの「ハンブルガー・バーンホフ現代美術館（Hamburger Bahnhof – National Gallery of the Present）」で開催された展覧会に伴い刊行された。

作者は、キャンバスという限界に閉じ込められながらもその境界に抗い、10年以上にわたり、人間の形を成しながら抽象的である絵画を制作してきた。これは作者曰く「性別を分けられ、人種で区別された身体の中で生きるという経験」を振り返るための手段である。本書は、作者の作品群を紹介しながら、より広範に美術史的文脈へ位置付けている。サイト・スペシフィックで大型の作品を含む絵画やドローイングは、展覧会のために制作された建築的インスタレーションの中で展開された。会場では、アメリカ人パフォーマーであるヴィト・アコンチ（Vito Acconci）、韓国生まれのアメリカ人アーティストであるナム・ジュン・パイク（Nam June Paik）、ドイツ人アーティストのシャルロッテ・ポゼネンスケ（Charlotte Posenenske）ら同美術館が所蔵する作品群と並べられ、作品同士の対話が演出された。