アメリカ人写真評論家でありキュレーター、ヴィンス・アレッティ（Vince Aletti）の作品集。作者は1970年代より、雑誌や書籍のページに印刷された写真を蒐集してきた。イースト・ヴィレッジのアパートにある、アンティークのフラット・ファイル・キャビネットの引き出しの中にスタックされてきた何百もの雑誌のページの切り取り、新聞の切り抜き、ギャラリーからの告知、ほかにも様々なエフェメラを一冊にまとめたのがこの『THE DRAWER（引き出し）』である。

エフェメラが描く75点の多層的な構図は、素材の写真そのものと、組み合わされて印刷された各ページが讃えられるべき美しさを持つこととあわせ、欲望の複雑さと多様性、個人的であり集団的でもある歴史を声として発することができる作者のユニークな能力の証明であり、そして我々を反映し形作る芸術の力の証明でもある。