NATURE MORTE 1983-1985 by Manfred Paul

ドイツ人フォトグラファー、マンフレッド・ポール(Manfred Paul)の作品集。ドイツ民主共和国(通称東ドイツ)がまだ存在していた頃に制作された、作者の静物写真のシリーズ。ここに収められている写真は、静物写真で一般的にみられる記号性を超え、二重に時を止めることで表現している。魚、木の葉や枝が湖の底で凍り付き、初雪が降る前から透明な氷の中に硬く閉じ込められている様子に似ている。静物、言い換えれば時間のない生は、ものとしての写真が時間の経過によってぼろぼろになるまでは停止したままとなっている。ここに写っているものは、どう見ても無頓着に見捨てられている。ガラスの花瓶に入りしおれたチューリップの花束は永遠の美を湛えている。その鋭さを携えたモノクロ画像は、咲き誇る花のはかなさとその代替性と比べても、痛々しくもどうしようもないほどに魅力的である。救いようのない疎外の中で、やがて必然的に我々が心に描く人間の存在に対する祈りのイメージとなるのである。

by Manfred Paul

REGULAR PRICE ¥6,050  (tax incl.)

hardcover
72 pages
245 x 315 mm    
black and white
2016

published by SPECTOR BOOKS