SÜDWALL by Margret Hoppe
ドイツ人フォトグラファー、マーグレット・ホッペの(Margret Hoppe)作品集。フランスの地中海沿岸に沿って旅をし、第二次世界大戦中のドイツ軍による占領と、この地に亡命せざるを得なかったドイツ人の痕跡を写真で捉えた一作。フランスの思想家、都市計画家のポール・ヴィリリオ(Paul Virilio)が撮ったブルターニュやノルマンディーの塹壕とは異なり、「地中海の壁(ドイツ語でSüdwall)」の歴史にはどうにも曖昧な部分がある。スペインとイタリアの国境の間、フランス領の海岸に沿って立つこの壁は、ドイツ国防軍が占領軍のために建設し、連合国軍に対する防衛拠点として1943年まで使われていた。今でもマルセイユ周辺には塹壕や防壁、砲台の跡が残っている。地中海地方ならではの植物が生い茂り、ほとんどそれと分からなくなっているものもある。本書には「Südwall」の残骸が写っている風景写真に加え、家や特別な場所の写真も収録されている。本作は、ドイツ人作家のリオン・フォイヒトヴァンガー(Lion Feuchtwange)、ドイツ人劇作家、詩人、演出家のベルトルト・ブレヒト(Bertolt Brecht)、ドイツ人小説家のトーマス・マン(Thomas Mann)をはじめとする、マルセイユ近郊のサナリー=シュル=メールに亡命していたドイツの知識人の歴史を辿る旅でもある。
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