COP by Christopher Anderson
国際的写真家集団「マグナム・フォト」正会員を務めるカナダ人フォトグラファー、クリストファー・アンダーソン(Christopher Anderson)の作品集。9.11テロ後、自らの第2の故郷の変わりゆくヴィジュアルランドスケープに触発され、ニューヨーク市の警官たちを撮影し始めた。ニューヨーカーたちを安心させるために、街中に防爆壁が立てられ、大型の銃を所持した警察官の姿が至るところで見かけられた。様変わりした街の様子は、作者に何か大きな間違いが起こっていることを伝えていた。2011年に発生した一連の抗議運動である『ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)』に続き、黒人男性を白人男性が窒息死させた「エリック・ガーナー窒息死事件」、そしてトランプの勝利といった世間を揺るがす出来事が立て続けに起きる中、より強大な権威に対する無意識の抵抗だったのか、気がつけば作者は再びニューヨークの街中で警察官たちの写真を撮っていた。自分が捉えたニューヨークのイメージを読み解き、これらが権力に対する抗議や批評とは全く異なる性質を持っていることに気が付く。そこには感傷にも近い感情があった。
「私はこの作品に労働者階級、移民の国アメリカのポートレイトを見出しました。警察官の制服は、アメリカの断面図の1つの形をぶら下げるための細い糸でしかありません。これらの写真は、ニューヨークへのラブレターに近いものだと感じました。」
―クリストファー・アンダーソン
作者は1999年のハイチ大地震の際に、沈みかけた木のボートに乗ってアメリカ亡命を図るハイチ難民を追った痛烈な写真でロバート・キャパ賞を受賞し、初めて世間の注目を集めた。前作『APPROXIMATE JOY』は2018年に出版された写真集の中で最も素晴らしい1冊として広く評価されている。