MEDEA by Stéphan Crasneanscki
フランス人アーティスト、ステファン・クラスニアンスキー(Stéphan Crasneanscki)の作品集。
作者はサウンド、イメージ、テキストを組み合わせた研究を行なっており、本作も例外ではない。このプロジェクトは、自身が創設メンバーである「SOUNDWALK COLLECTIVE」とともに黒海を横断し、トルコ、グルジア、ロシア、クリミア、ウクライナ、ルーマニア、ブルガリアの海岸でレコード『Medea』のための音素材を記録する旅の間に発展していった。
10年もの歳月をかけて夕暮れ時に撮影されたクラスニアンスキーの写真は、ギリシャ神話の美しい魔女メーデイアの陰鬱な側面を表現している。復讐に燃える母、女神ヘカテに仕える巫女、キルスの姪であるメーデイアの果てしなく屈折したイメージは、戦争と権力によって分断された地域を横断して神話を追跡する旅の日誌の断片として再構築されている。メーデイアは、まるでブラックボックスから掘り起こされたかのように、かろうじて知覚できる人物、場所、シルエットとして具現化されてこの世に戻ってくる。暗いベールに包まれた光の中に固定された幽霊のイメージは、手がかり、あるいは水没した世界の鏡像として姿を現す。
反転した光は、形と物質の一時性に対する我々の認識を混乱させる。それは、歴史とメーデイアの苦悩が閉じ込められているかのような黒海流域で今なお繰り広げられている、現代の悲劇を呼び起こすのに必要な混乱である。
分野を横断し活動する作者による序文と作品、シンガーソングライターであり作家、詩人のパティ・スミス(Patti Smith)によるテキストと写真、あわせて映画監督、脚本家のフィリップ・グランリュー(Philippe Grandrieux)によるテキストとドローイングを収録。