SHELL READER by Nina Canell
ベルリンを拠点に活動するスウェーデン人アーティスト、ニナ・カネル(Nina Canell)の作品集。本書は、2022年にドイツの「ベルリン・ギャラリー(Berlinische Galerie)」で開催された個展「Nina Canell: Tectonic Tender」に伴い刊行された。
作者の芸術的な実践は、完成された作品を中心とするものではなく、過程と相乗効果を重視している。アーティストブックであり、展覧会カタログでもある本書は、鉱物である方解石(カルサイト)の物質的な生命力について考察した経験的インスタレーションに基づいた一作である。
文字通りに我々の体重の下で砕けていく数トンもの貝殻は、地面から声を上げ、ギャラリーの床を歩く時とは異なる感覚を生じさせる。海の軟体動物から採れる砕かれた方解石は、コンクリートの主要な材料でもあり、そのため身の回りの構造環境において大半を構成する要素となっている。作者の彫刻作品「Muscle Memory」では、建設業を支えるこの生体鉱物(バイオミネラル)が、展覧会の会期が進むにつれて次第に分解されていく。物質的な負荷は、音を立てながら一定期間を経て持続的に変化していく彫刻へと姿を変え、我々を支える無数の壊れかけた体へと思考を促す。本書は先述のように炭酸カルシウムによって組成される方解石の物質的な活力を主張しており、「Muscle Memory」の壊れた貝殻の破片を詳細に紹介する。この断片を前景とすることで、ヒビが入り、パキッと割れ、裂け、破片になる様子を1ページごとに反響させている。本書はさらに、ロンドンを拠点に活動する作家のサリー・オライリー(Sally O'Reilly)によるエッセイと、科学史家のジュリア・リスポリ(Giulia Rispoli)と作者による対談を収録する。
1979年にスウェーデンのベクシェーで生まれた作者は、ベルリンを活動の拠点として生活している。作者によるインスタレーションは、軽くてつかみどころのない日常を具体的に表現する。作者が扱う水、石、空気、土、木、銅などの自然素材は電弧や熱源を介して掛け合わされ、繊細で儚い物理的な反応を生むことで、我々の身近な環境との生来の関係性を明らかにし、強調する。
EXHIBITION:
森美術館開館20周年記念展
私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために
会期:2023年10月18日(水)- 2024年3月31日(日)
休館日:会期中無休
時間:10:00-22:00(※火曜日のみ17:00まで)
開催場所:森美術館
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