RATIO OF DISTANCE by Silke Otto-Knapp, Florian Pumhösl
ドイツ人アーティスト、シルケ・オットー・ナップ(Silke Otto-Knapp)とオーストリア人アーティスト、フロリアン・プムフースル(Florian Pumhösl)の作品集。2014年にタカ・イシイギャラリーで開催された展覧会「Ratio of Distance」に伴い刊行された。美術史家であり評論家のトム・マクドノー(Tom McDonough)によるテキストを収録。(英語、日本語)
以下プレスリリースより抜粋
本展は、ロサンゼルスを拠点に活動するシルケ・オットー・ナップ、そしてウィーンを拠点に活動するフロリアン・プムフースルの絵画作品によって構成されます。オットー・ナップとプムフースルは、2008年にケルンのダニエル・ブッフホルツにて個展を同時開催し、その後、2013年にウィーンのシェーンベルク・センターで開催されたグループ展「Art is: New Art」にともに参加しました。本展は、彼らの継続的な対話を新たな作品として形にした初めての二人展となります。
シルケ・オットー・ナップは、舞台デザイン、バレエ、モダンダンスの歴史資料に基づいて、キャンバスに水彩絵具のみで描くという独特の手法で絵画を制作してきました。平坦さと深さの両方を実現する空間を作るために、銀色の水彩絵具とガッシュを用いて階層化されたオットー・ナップの絵画は、風景と身体の空間における関係性、つまり、図と地の複雑な関係性を、ほとんど抽象的な要素に変換することに成功しています。本展では、2014年の夏にカナダのフォーゴ島(ニューファンドランド)にて制作された新作絵画を発表いたします。海に囲まれた、広大な陸地の続く静かなこの島を歴史的なモチーフとしてとらえることに強く興味を抱いたオットー・ナップは、黒色と灰色の水彩絵具を用い、島を正面から見た図と上から見た図が融合されたイメージを描きました。画面の空間は不安定な状態を保ち、鑑賞者は立つ位置によって視点を変えることができます。フロリアン・プムフースルは、アヴァンギャルド・ムーブメント、とりわけそのグラフィックス、タイポグラフィ、建築を参照にしながら、絵画と映像の制作を行っています。プムフースルの大きな関心は、ひとつの文化から別の文化へ、またひとつの媒体から別の媒体へと、モチーフが伝わっていく経緯とそこからあらわれる抽象的な視覚言語です。「抽象絵画を制作することは、再生とインストラクションをともなう映像言語にかかわる行為であると思う。」と作家は述べています。本展では、石膏パネルの上に油彩をスタンプして描いた抽象絵画のシリーズを展示いたします。このシリーズは、世界一周の航海路――海、島、陸、大陸、そして国として私たちが普段識別している、それらの実体の境界線を描く航海図――について言及した作品です。作家はこの航海図を、具体的な位置情報をあらわす地図であると同時に、経路図、指示図、覚書、観相学、それらのすべてにあてはまらないもの、どれもが、同時には成立しないものであると述べています。