THE INNOCENTS: 2000-2003 by Taryn Simon

アメリカ人ヴィジュアルアーティスト、タリン・サイモン(Taryn Simon)の作品集。

作者の初期の作品群『The Innocents』(2003年)を再びまとめた本書は、犯していない暴力犯罪のために投獄された人々のストーリーを記録したものである。アメリカで DNA鑑定をもとに無罪を証明した最初期のケースの写真記録として、アメリカの刑事法制度を痛烈に非難するプロジェクトであり、タイトルは ”無罪" "無実" を意味する。

本書は、正義の裁定者としての写真の信頼性を問うている。罪を犯したと疑われる人々は写真や面通しなど、正確な視覚的記憶を前提とした手続きによって識別される。しかし、似顔絵やマグショット(※註)、ポラロイド写真、面通しを目にすることにより、目撃者の記憶は変化することがある。本書に掲載されているケースでは、写真という存在が、犯していない罪のために人々を有罪とし、刑務所に入れる手助けとなった。本書は犯罪現場や誤認、逮捕、アリバイなど、その有罪判定に特に重要な意味を持った場で作者が46人の個人を撮影した写真群を編纂したものである。

本書は2003年に刊行された作品集の増補版であり、本版にはこれまで未公開であった写真や、冤罪事件の解決や刑事司法制度の改革に取り組む非営利団体「Innocence Project」の共同創始者であるピーター・J・ニューフェルド(Peter J. Neufeld)とバリー・C・シェック(Barry C. Scheck)による新たに追加された序文、刑法と社会正義の活動家であるタイラ・パターソン(Tyra Patterson)との対談に基づき教授でキュレーターのニコール・R・フリートウッド(Nicole R. Fleetwood)が著したエッセイ、本書に収められた誤認逮捕や不当な有罪判決の数々の裏側にあった処置を詳述する捜査報告や裁判記録、書簡が収録されている。

※註 主にアメリカで用いられる逮捕直後に撮られた容疑者の写真。 身長計の前に立ち番号などを記した板などを持つのが通例。

by Taryn Simon

REGULAR PRICE ¥11,000  (tax incl.)

hardcover
440 pages
258 x 344 mm
color, black and white
2022

published by HATJE CANTZ