LINIENLAND by Alicja Kwade
ポーランド人アーティスト、アリシア・クワデ(Alicja Kwade)の作品集。本書は、チューリッヒの「ハウス・コンストルクティヴ美術館(Museum Haus Konstructiv)」にて2018年に開催された展覧会に伴い刊行された。
彫刻家、コンセプチュアル・アーティストとして広く知られている作者は、人々にとって「現実」とされている物事に疑問を投げかける相対主義者である。この立場からのアプローチを基礎として、物理学、哲学、社会学といった角度から様々な現象や概念モデルを取り上げ、独特のマルチメディア作品へと変換する。その結果、概念的な背景を持った作品が、形式的には厳格でありながら感覚的には詩的なものとなる。
本展においては、作者は3フロアにわたる大規模なインスタレーションを構想した。古代より議論の対象となってきたパラレルワールドの概念に言及した作品で、鑑賞者が歩いて通ることのできる立体的なグリッド構造に、天然石で作られた様々なサイズの球が無重力状態で浮かべられている。この正方形に基づいた大規模な構造は、多元的宇宙を表象していると捉えることができ、立方体の境界一つ一つが異なる現実を暗示している。このグリッド構造は、中に浮かぶ石の球との相互作用が働いており、作者は個々の棒が球体の支柱になるという厳格な規則性を守って作品を構成している。鑑賞者をこの多元的な世界の中へと誘い、大きな球体の重力を体験させることで重力場にいるような感覚を想起させるのである。天然石は、地球上の様々な大陸から産出されることから、その場所を象徴する材質である。数百年をかけて形成され、年代を特定することができる多層的な構造を持つこの素材自体が、一種のタイムスケールとして機能する。作者は本作において、空間、重力、時間に関する独自の考えを非常に興味深い方法で実現した。
オーストリア人美術史家で、本展のキュレーターを務めたサビーネ・サッシュル(Sabine Schaschl)と作者による対談も併せて収録。