ドイツ人アーティスト、アンゼルム・キーファー（Anselm Kiefer）の作品集。今日活躍している中で最も高い評価を受けていると言える画家の1人である作者の絵画とインスタレーションの重要作品をまとめた1冊。テムズ川の南に位置するバーモンジーの全ギャラリーで同時開催された同名の展覧会で、神話、天文学、歴史など、作者が数十年に渡って描き続けてきたテーマの数々を見ることができた。

宇宙の姿やその誕生のメカニズム、物質との間に働く基本的な相互作用を明確にしようとする「弦理論」として知られる数学的モデルに基づき、作者は「一見何の関係もないように見える、様々な文化や歴史の原理原則の理論をまとめようとした」。つまりそうすることによって、複雑な科学的理論と古代神話の主題との間につながりを見いだそうとしたのである。

この展覧会の屋台骨であり、タイトルにもなっている30個のガラスの陳列ケースを使ったインスタレーションと、作者の作品を特徴づける巨大なサイズのキャンバスに描かれた油彩を豊富な図版で紹介。作者と、作家であるクラウス・デムス（Klaus Demutz）の対談では、作品の基になっているアイデアを徹底的に紐解き、作者の主な関心事を明らかにしている。オールブライト＝ノックス美術館のペギー・ピアース・エルフビン・ディレクター、エスカトン財団の会長であるヤンネ・シレン（Janne Sirén）によるエッセイは、会話と文章におけるキーファーの言葉の使い方に注目する。