PROJECT FOR A NEW AMERICAN CENTURY by Josh Kline
アメリカ人アーティスト、ジョッシュ・クライン(Josh Kline)の作品集。2023年4月から8月にかけてニューヨークの「ホイットニー美術館(Whitney Museum)」で開催された展覧会に伴い刊行された。本書は、テクノロジーと企業資本主義の台頭が、いかに私たちの生活を破壊し、社会を分極化させたかを浮き彫りにする作者を深く考察する一作。
同世代で最も刺激的なアーティストの一人である作者は、新しい技術が人々の生活や働き方にどのような影響を与えるかについて向き合うインスタレーション、彫刻、映像、写真を制作している。エッセンシャルワーカーからクリエイティブ・クラス(※註)まで、労働力全体に影響を与えるさまざまな懸念に取り組みながら、作者は気候変動、オートメーション(自動化)、病気、政治がいかに私たちのアイデンティティを形成してきたかを示している。生活の多くの側面が脅威にさらされている今、作者は、我々がどうやってここに辿り着いたのかを冷静に見つめ、より公平で共感的な未来を大胆に想像している。作者の作品は、テクノロジーがアメリカにおける不公平の格差を拡大し、強化しつつも、より公平な世界を実現する可能性を秘めていることを示す。「技術革新がもたらす結果について考えるアーティストとして、誰が得をするのかについて疑問を投げかける義務があると思う」と作者は語る。本書では、次の100年の社会を想像する現在進行中のインスタレーション・サイクル「Freedom」(2014-16年)、「Unemployment」(2015-16年)、「Civil War」(2016-19年)、「Climate Change」(2019-)が収録されているほか、初期の作品群「Creative Labor」(2009年-)と「Blue Collars」(2014年-)、そして初公開となる最新作の制作イメージとコンセプトスケッチとともに紹介する。
※註 アメリカの社会学者リチャード・フロリダが提唱した労働階級で、「創造的専門性を持った知的労働者」のこと