南アフリカ人アーティスト、ウィリアム・ ケントリッジ （William Kentridge）の作品集。2022年9月から12月にかけてロンドンの「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ（Royal Academy of Arts, RA）」で開催された展覧会に伴い刊行された。

作者はこれまで、エッチングなどの版画、木炭などを用いたドローイング、コラージュ、映像、彫刻、タペストリー、演劇、オペラ、ダンス、音楽など、幅広い分野で世界的に高く評価されてきた。ヨハネスブルグ生まれの作者は、1980年代のアパルトヘイト体制下で初期の作品を発展させ、観客に衝撃を与えるような大規模な制作物やアニメーションを世界中で発表し続けている。

展覧会では、会場のメインギャラリーの空間を一変させ、イギリスで開催された作者の展覧会としては最大規模となった。初公開作品も数多く含まれ、あわせて本展のために特別に制作されたものも展覧された。幅4メートルのタペストリー、作者を象徴する代表的なスタイルである木炭で描いた木や花の作品、息を呑むような3面スクリーンでの映像作品「Notes Towards a Model Opera」などを観ることができ、没入感あふれる作品群が並んだ。

評論家であり研究者のスティーヴン・クリングマン（Stephen Clingman）による解説を収録。多重にわたるレイヤー（層）と作者の芸術における連携、交差、繋がりを通じて、作者とその実践の周囲を回遊し、掘り下げている。