THE SLEEPERS by Sophie Calle
フランス人コンセプチュアル・アーティスト、ソフィ・カル(Sophie Calle)の作品集。1979年に発表された、作者にとって代表的なシリーズの一つ「THE SLEEPERS」を収録する。本シリーズは「ACTES SUD」より2000年にフランス語で刊行され、今回「SIGLIO」から初めて英語版として出版された。
作者にとって最初の実験的な作品のひとつとして制作された本作は、友人、知人、見知らぬ人を自分のベッドに招いたものである。パン職人、ベビーシッター、俳優、ジャーナリスト、仕立屋、トランペット奏者、3人の画家など、招待に応じた27人が参加している。作者は彼らが起きている時も寝ている時も撮影し、ドアを閉めて私的な会話のやりとりも密かに録音した。招いた人物それぞれに作者は食事を提供し、また同意を得られた際には個人的な嗜好、習慣、夢、そして作者のベッドで眠るという行為に対する解釈を尋ねるアンケートを行った。その解釈に対しては、好奇心、ゲーム、芸術作品、あるいは作者自身が意図したように仕事と答える者もいた。その結果として、1979年に展開された最初の展覧会では、198枚の写真と短いテキストがグリッド状に並べられた。
オリジナルのインスタレーションとは異なり、このアーティスト・ブック版では、写真とキャプションだけでなくこれまで翻訳されていなかった作者の面白い小説のような物語も収録されている。寝室というひとつの境界的な「ミザンセーヌ(mise-en-scène / ※註)」を起点として、まるでリアルタイムのように、眠る人が訪れ、話し、眠り、食べ、去っていく様子をテキストと写真で記録している。強烈で、時に驚かせ、また時に愛らしいこの特徴は、8日間の「夢」のような何かへと溶けていく。その後の作者の作品の多くの「種」として在る、厳格で罪深いリサーチ方法、親密さと排除の洗練、そして絶え間ない好奇心、それらがこの作品にすでに埋め込まれている。本作で作者が眠る人を観察すると、眠る人もまた作者を観察する。それはお互いに素直な反応であろう。布製本で枕のように柔らかく仕上げられた本作は、表紙を開くと同時に始まり、読者をベッドに横たわる者へと誘う。
※註 演出を指す言葉であり、シーンがどのように組み合わされ、どのように物語が語られるかを表す