ニューヨーク・スクールを代表するアメリカ人画家、ジョアン・ミッチェル（Joan Mitchell）の作品集。アメリカの「サンフランシスコ近代美術館（San Francisco Museum of Modern Art、通称SFMOMA）」と「ボルチモア美術館（Baltimore Museum of Art）」が共同企画し、2021年9月にサンフランシスコ近代美術館、2022年3月にボルチモア美術館、同年10月にパリの「ルイ・ヴィトン財団美術館（Fondation Louis Vuitton）」で開催された巡回展覧会に伴い刊行された。

実験的な試みにおいて恐れを知らない作者は、比類なき美しさ、精神力、感情的な強烈さを持つ作品を生み出した。本書では、作者が抽象絵画をどのように拡張したのかを明らかにし、作者を形作った大西洋間の文脈に光を当てながら、芸術最大の巨匠である作者の物語を展開する。1950年代初頭にニューヨークで制作した絵画作品から、フランスで制作された壮大なマルチパネルの作品まで、作者の創作活動の全軌跡を豊富な図版で紹介する。代表作に加え、滅多に目にすることのできない絵画作品や紙作品、スケッチブック、そして作者の生活や社交の輪、周辺環境などを記録した写真も収録。

本書は、年代順に並ぶ10の章で構成されており、学術的なテキスト、徹底したエッセイ、芸術的、文学的に応答する作品が掲載されている。各章は、密接に関連する一連の絵画を中心に、経験、感覚、記憶、そして場所に対する深い感覚によって彩られた、移り変わる心象風景を照らし出している。作者の芸術、人生、詩や音楽とのつながりについて、画期的な研究とさまざまな視点を提示するこの前例のない本書は、作者を敬愛する人々にとっても、作者の作品を知ったばかりの人々にとっても、不可欠な参考書である。