50% THE VISIBLE WOMAN by Penny Slinger
イギリス人アーティスト、ペニー・スリンガー(Penny Slinger)の作品集。1969年に手製のヘビ革装丁で修士論文として制作したのち、1971年に要約版として出版されて以降、長らく絶版となっていた本タイトルの出版50周年を祝し、省略される箇所なく再版された。
「チェルシー・カレッジ・オブ・アート(Chelsea College of Art)」の学生時代、作者はマックス・エルンスト(Max Ernst)のコラージュ作品集「Une semaine de bonté (慈善週間 / A Week of Kindness)」、「La Femme 100 Tetes(百頭女)」に出会い、それをテーマに論文を書いた。その論文に、2冊のエルンストの本と自身のフォトコラージュ作品に関連させて作ったモンタージュ・フィルムを添え、コラージュの写真プリントとそれぞれのイメージに付随する詩的なテキストを印刷した薄紙とともに一冊の本にして提出した。その本をもとに1971年に薄紙をベラム紙に変えた新版が刊行、2021年にベラム紙はトレーシングペーパーとなり新たに出版された。
作者は、エルンストによる視覚的なストーリーやその配置に触発される一方で、男性優位のシュルレアリスム界において大半に共通していた作品群と同じく、エルンストの女性表現の少なさにも衝撃を受けた。それでも作者はシュルレアリスムの魔法のような表現に魅せられ、その手法を用いて女性心理を表現する言語を創り出したいと思うようになった。作者の作ったモノクロのフォトコラージュは、主に女性の身体、時に作者自身をモチーフとしており、そこにテキストが印刷された半透明の紙を重ねることで、イメージとテキストは見事に融合し、芸術的かつ文化的な視点から逃れたい女性に向けた物語が姿を表す。
本書は9章に分かれた内容で構成されており、作者と、友人でもあるアーティストのリンダー(Linder)による対談も収録されている。