イギリス人アーティスト、リック・マイヤーズ（Rick Myers）の作品集。本書は、20世紀を代表する映画監督、ルイス・ブニュエル（Luis Buñuel）が遺した未完のプロジェクトを遂行しようとする作者の試みを記録した一冊。そのプロジェクトとは、ブニュエル自身のシャツに向けて発砲しても跳ね返ってしまうほど弱い電荷を持つ弾丸を作るというものであった。遺品や銃弾メーカーのためのオンライン掲示板、米国シークレットサービス関連の弾道研究所まで、さまざまな情報源と相談しながら、作者は弾丸を作り、ブニュエルが実際に着ていたシャツに向けて発射しようとした。この不条理な試みを完遂させようとする中で、作者はあらゆる場面で多彩な人物たちに出会っていき、数々の失敗に直面した。

本プロジェクトは、映像作品、マルチプル作品、レクチャー・パフォーマンスなど、さまざまな形をとっているが、本書ではその全てが紹介されている。また、作者の執筆、研究、通信、写真の記録も収録されており、長年にわたる成果を失敗の詩学に関する考察として統括している。