カナダ人アーティスト、ジェフ・ウォール（Jeff Wall）の作品集。本書は、2007から2008年にかけてロンドンのギャラリー「ホワイトキューブ（White Cube）」で開催された作者の個展に伴い刊行された。同ギャラリーでの作者の展覧会は1994年以来であり、カラー写真作品で知られている作者が1996年から制作を開始したモノクロ作品を全て掲載している。

作者は、透過光フィルムの裏から光を当てるライトボックスを用いたカラー作品で最もよく知られているが、過去10年間はモノクロ作品にも同様に精力的に取り組んできた。広大な冬の寒空のもと集合場所に何気なく集まった労働者のグループ、郊外の公営住宅に入居している人々、空き地を空想の戦場に見立てて遊ぶ少年たちのグループなど、被写体は多岐にわたる。これらの作品はリアリズム、そして作者が「Near Documenrary（=ほぼドキュメンタリー）」と呼ぶ、実際に起きているであろう光景、または作者が目にした光景を再びセットアップし画面を構成した上で撮影する手法の可能性を追求した大判作品である。

2005年にイギリスの「テート（TATE）」が出版する「Modern Artists Series」シリーズのタイトルとして刊行されたモノグラフ「 Jeff Wall 」の著者であり、ロンドンを拠点に活動するキュレーター、ライターのクレイグ・バーネット（Craig Burnett）による論考も掲載。作者の制作における重要な側面の一つであるモノクロ作品を初めてまとめた一冊。