フランス人フォトグラファー、ヴァンサン・フェラーネ（Vincent Ferrané）の作品集。

作者は視覚がもたらす情報処理というものに着目して制作に挑み、その作品によって生じる叙情的な効果を探る。このプロジェクトは、コントーション（※註）の練習前のウォーミングアップの際にポーズを取った身体を用いている。よくある室内風景の中で撮影し、歪ませ曲げられた身体をグラフィック的に描いているこの作品群は、撮影中に捉えた複数の画像を連ねている。それぞれのイメージは微妙に違いはあれど酷似しているものを採用しており、軸で繋ぎ左右対称な状態に仕上げるには十分なくらい似通っている。このように画像を並べることで、より奥行きある高次元の世界が生まれ、全く新しいイメージを作り出している。

結果として、中心を軸としてその周りが密接につながっているように見え、まるで催眠術的な絵柄や、性格検査法であるロールシャッハ・テスト、その他視覚的なゲームをどれも体験しているかのように、イメージが揺らいでいる。前作『INNER』（2022年）と同様に、本作でも女性像が作品の中核を成す。作者の生み出す作品では馴染みのある「親密さを感じさせる空間」という存在が、本作においては、リズミカルなパターンで構成された「振り付けの背景」となっている。

超自然的かつ変幻自在な対象として描かれたのは、プロダンサーである「セレステ（Céleste）」だ。本というオブジェを用いることで、この万華鏡のような表現と追究を可能にしている。

タイトルの『CÉLESTIAL』は、神々しい、神聖な、天国のような、などの意味を持ち、被写体であるセレステの名もまた同じ語源を持つ。

※註 身体を極度に曲げたり捻じり、柔軟性を極限まで高めたパフォーマンス、曲芸ま、身体表現を指す。 現代ではサーカス、大道芸をはじめとしてショーなどで行われる

In his new photo book Célestial, French photographer Vincent Ferrané explores emotional functioning through a series that ventures into visual processing. The project is based on warm-up poses from contortion practices. The graphic treatment of the contorted body within a mundane interior takes on a higher dimension through the association of multiple images captured during the shoot—images that are slightly different but similar enough to allow axes of symmetry to align them, creating a new image altogether.

The result oscillates between hypnotic patterns, Rorschach tests, and a visual game where the center and periphery of the image seem intimately connected. As in the artist’s previous book with Art Paper Editions (Inner, 2022), a female figure takes center stage. Here, the intimate space serves as a backdrop for a choreography organized into a rhythmic pattern.

This figure is Céleste, a professional dancer portrayed as a supernatural and transformative subject. A kaleidoscopic exploration made possible by the book object.