CHILDREN by Olivier Suter
スイスを拠点に活動するアーティストであり美術教育者のオリビエ・スッター(Olivier Suter)の作品集。本書に収められた写真が様々な時代のものであることは、ポートレイトの撮り方やスタイルの違いから理解できる。一人で、もしくは父親や母親、兄弟姉妹や友達と一緒に写っている子供たちの写真を見ていると、何故彼らがこのコレクションに加えられたのか疑問になってくる。ページを捲るうちに、彼らが未来の作家や数学の天才、果ては独裁者まで、有名無名の人々の幼い時の姿であることがどことなく分かってくる。そこに気づくと、子供たちの顔の特徴や表情から未来の姿を想像せずにはいられなくなる。この眠たそうな子供が、やがてジミ・ヘンドリックスになったのだろうか?クラスメイトの中で一人不機嫌そうにしている少年は、未来のアルチュール・ランボー?これは小さい頃のアンゲラ・メルケル?そしてこれは悪ガキ時代のアル・カポネ?この小粋な男の子は本当にミニサイズのフランシスコ教皇?あの元気いっぱいの子供がウサマ・ビンラディン!?驚くような発見があること請け合いである。顔の特徴からその人の性格や精神的特性が理解できると信じた17世紀のシャルル・ル・ブラン的な人相学や、1930年代にベルギーの植民地支配者たちが頭蓋骨の大きさや形状でツチ族とフツ族を分類するのに用いた骨相学のような疑似科学は今では過去の遺物になり果て、賢明な人なら人種によって違いがあるという考えも即座に否定するようになった。本書に登場する子供たちの顔を見ていると、子供であれ大人であれ、顔を見ればその人の運命がわかるという考えがいかにナンセンスであるかがよくわかる。我々は、作者が提示する世界中どこにでもいる子どもたちと何ら変わるところのない何十個もの幼い顔を見つめて、彼らがどんな大人になったかを知って、ただただ面白がったり驚いたりするばかりである。